/ Date: 2003/01/10(Fri) 23:19
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今までの医療ミスへの反応は「犯人捜しだった」。だれか一人に責任を押し付けて、病巣がなくなった、としていた。
(バックに暗闇の森の中を逃げ惑う白衣を着た医師らしいイメージが映る)
今夜の提案はシステム ザ アプローチ「System the approach」
「組織を体系的に改革する?」
単純な医療ミスというのは、まずありえない。
なぜミスがおきるのか、という原因究明へのアプローチが大切と呼びかけている。
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責任があるのは、事故をおこした本人のみでなく、いくつかの要因が組み合わさった結果、として、事例がでる。
事例:看護師、ミシェル、ジョンソンの利尿剤と塩化カリウムの取り違え例。
夜間、人手の少ない時に心不全の患者が入院。利尿剤の指示で注射をする。走ってアンプルを手に取り、病室で注射をしていると、患者は苦しいと言い、呼吸が止まった。KCLを静注してしまったのだ。
この25年勤続のベテラン看護師は辞職し、看護師の身分も保留された。
(この後、アメリカでは死刑囚の執行の時にKCLが使われていると、その劇薬ぶりが紹介された)
実は当時、KCLによる死亡例は多く報告されており、事故のリスクを避けるために、以下の工夫が推奨されていた。
劇薬は鍵のついた薬品棚に置く。ほかの一般薬と同じところには置かない。
アンプルのラベルに赤い追加のシールをつけるように、薬の販売元がシールを送付していた。これらの処置はなされていなかった。
「能力のない者がミスを起こす」というクラシックな考えだと、ミスをした一人の人間にすべての責任を押し付ける。従来はこうだった。本当は、安全に働けるシステムを作ることが重要だ、と話が進みます。
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上記の話に続けて、航空業界のミスをなくす努力を引用します。
航空業界はパイロットに注意深くなれと頼んだのではない。事故の80%はパイロットのミスでおきているのだが、パイロットがミスをしても事故が起こりにくいようにシステム全体を作り上げてきたのだ。
(麻酔科領域では有名なfail safe(二重安全装置), fool-proof(間違えようのない、しくじりようのない、安全な、絶対に危険のない)などの概念ですね。)
事故をおこしたパイロットを罰する視点ではなく、どのようなミスが生じたのかを調べて、次に同じような事故がおきないよう、安全対策を練ることに視点を持っていったのだ、と。
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医学も航空業界に学べる。
関係者がミスを報告できるようにする文化・土壌をはぐくむことが重要。
しかし、報告するものを「お前が悪い」と攻撃する因習がある。
事例:薬剤師デニスは、数人の重症患者にある共通点があることにきづいた。
彼が抗生物質と思って出していた薬が、筋弛緩薬だったのだ。彼は悩んだが、同じ事故が続かないように、正直に上司に報告した。しかし彼は疎外され、孤立する。
実は両者の包装は非常に良く似ていた。その上、同じような事故が他の病院でも起こっていたのだ。製薬会社から追加の通達が病院には届いていたが、この薬剤師デニスのところには届いていなかった。
「事故を減らすには、(犯人探しではなく)システム改革が必要なのだ!」
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このシステム改革にまず麻酔科医達が取り組んだ、と話が続き、アメリカ、ボストンのDr.エリソン・ピアスが登場。
麻酔による死亡事故が多かった1960年代、Dr.エリソン・ピアスは死亡例についての記録を取り始めた。
事例:18歳、女性。全麻下の抜歯術。麻酔開始十数分後に心停止。
調べると気管挿管でなく、食道挿管になっていた。
1983年。ピアスはアメリカ麻酔科学会ASAの会長となり、人為ミスが起こらないようにと活動を続けた。その頃、重要な2種類のモニタが登場し、酸素飽和度を測定できるパルスオキシメータと呼吸中の炭酸ガス濃度を測定できるカプノグラフの利用促進を進めた。
このような活動により、1950年代には麻酔の死亡率は1/3000例、だったのが、今では当時の1/100にまで低下した。
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上記はアメリカでの事例だったが、ここで英国の重要な事故と裁判事例が挿入された。
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1947年、イギリス。
膝の治療を受けるため、脊椎麻酔を同じ日に受けたセシルとローの2名は、下半身麻痺の合併症にあった。当時の裁判長は、前の裁判で病院や医師に厳しい判決をしていたので、名誉挽回で、次回には病院や医師に厳しくしないつもりでいた。また、当時英国では国民健康保健システムが始まったころだったので、この保健システムを育てたかった。判決は、アンプルを滅菌していたフェノールが、目に見えない細かいガラスのひびから薬液の中に混入したために、このような下半身麻痺が生じたとの説を採用し、責任の所在はうやむやとなり、患者への保証もなかった、という。
なぜ、あるいは、何が麻痺の原因だったのかは、それから、50年後に再検討するまで明らかにはならなかった。
50年後、原因究明をすすめた医師?はアンプルのみでなく、注射針や注射器にも疑いの眼をむけた。患者の穿刺した皮膚面には潰瘍ができていたからだ。 実は:当時の滅菌は「煮沸」で「硬水」を使っていた。硬水は湯垢が出やすいので、定期的に酸性薬で湯垢を落とす必要があった。湯垢を落とす酸性薬が残ったままの状態で煮沸消毒した注射器を使用したため、下半身麻痺になったのであろう、との結論がでた。
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エピローグ:
医師達は医療ミスについては、口を閉ざし、公開を嫌う。
(日本でも、ひやりはっと報告が始まりましたが、正直者がバカをみるような土壌では、だれも報告したがらないでしょう。報告書の法的な保護がどうなっているのかも不明です。それでも報告データの蓄積が集まりつつあります。)
患者の為に安全な医療を提供しようと改革を進めるならば、System the approach
の道をとっていく(べきだ)。(System the approachには、よい日本語訳がないようです。タイトルを利用するなら「改革を体系的にする」、「組織を体系的に改革する」あるいは「体系的にアプローチせよ」でしょうか?)