はくざん 通信   第36号 2003.9.10   ホーム  はくざん通信の目次に戻る 


頚椎の手術2

○頚椎の椎弓形成術と椎弓切除術
○椎弓形成術の手術手技
○椎弓切除術の手術手技
○術後の経過
○危険性と合併症
○よくある質問項目
○頚椎症性脊髄症とは


○頚椎の手術2

 「頚椎の手術1」では頚部の手術全般と前方からの手術について述べました。「頚椎の手術2」では頚部後方からの手術について記述します。一般論ですが、

 ●椎間板ヘルニアや限局的な骨棘などの限局的な病変では、前方からの手術を選択します。

 ●狭窄症、脊髄症や靭帯骨化症などによる広い範囲の圧迫には、後方からの除圧手術を選択します。


○頚椎の椎弓形成術と椎弓切除術

 頚部脊柱管狭窄症、頚椎症性脊髄症、後縦靭帯骨化症や黄色靱帯骨化症などによる広い範囲の脊髄神経圧迫には、後方からの除圧手術を選択します。椎弓や棘突起を処置し、脊髄の除圧をします。
 ご本人の活動性が高い場合や術後の不安定性を防ぎたい場合には椎弓形成術を選択します。
 より高齢の方、ご本人の活動性があまり高くない場合や術後の不安定性がおこりにくい場合などは椎弓切除術を選択します。


○椎弓形成術の手術手技

●全身麻酔をした後、腹臥位になります。
●頚部の後方に正中切開を入れます。切開線は約10 〜 15cm 前後です。典型例では第3から第7頚椎(C3からC7)までの椎弓を処理します。

●棘突起や椎弓に付着している頚部の筋肉を剥離(はくり)します。

●棘突起(中央図:緑色、斜線の部)を切除します。切除後は右下図のようになります。

          


●一方(左)の椎弓の根元、椎間関節の手前に割線を入れ、骨を安全に削ることのできる専用の機械で一方の椎弓を切断します。
●反対側(右)の椎弓の根元にも同様に割線を入れますが、こちらは切断せずに骨皮質をわずかに残し、蝶番(ちょうつがい)の役割を与えます。

  hinge 除圧後


●骨皮質をわずかに残し、蝶番の役割を与えた側(右)を支点にし、切断した側(左)から脊髄の入っている脊柱管を広げていきます。蝶番の所には小さな骨(棘突起の骨を再利用)を移植して補強します。広げたところが閉じないように 糸で固定します。
    
●止血を確かめ、ドレーンを入れて縫合閉鎖します。


○椎弓切除術の手術手技

●全身麻酔をした後、腹臥位になります。
●頚部の後方に正中切開を入れます。棘突起や椎弓に付着している頚部の筋肉は剥離(はくり)します。
●両側の椎弓の根元、椎間関節の手前に割線を入れ、骨を安全に削ることのできる専用の器械で両方の椎弓を切断します(下左図)。


●椎弓を棘突起と共に切除し、脊髄への圧迫を取り除きます(上右図)。
●止血を確かめ、ドレーンを入れて縫合閉鎖します。


○術後の経過

 椎弓形成術の術後はベッド上安静が約10-14 日。3週頃から頚椎装具をつけて起立、歩行訓練をし、術後8-9週ほど経つと退院予定になります。
 椎弓切除術の術後はベッド上安静が5-7日。簡易装具をつけて起立、歩行訓練をし、術後7-8週ほど経つと退院予定になります。
 全身状態をよく保ち、栄養、安静、リハ訓練を続けることは重要です。遺残症状を気にするよりも、改善している点に関心を向け、明るい面に注目するほうが快復は早くなります。
 但し痛みが続くようでしたら主治医に相談してください。術後の経過を再確認致します。

○危険性と合併症:

●神経根障害:痛み、しびれ、筋力低下など。
●脊髄への障害: 痛み、筋力低下や運動障害など。
●出血、硬膜外血腫、血栓、静脈血栓症
●感染      
●硬膜損傷:脳脊髄液が漏れ出る。
●脊柱の不安定性が出てくる
●麻酔や全身状態に起因する合併症が生じる。
 上記の合併症は教科書に記載してあるもの、一般的に起こりえるのものを並べましたが、手術に精通した経験豊かな脊椎外科医の手術では、まれです。

○よくある質問項目:

1.どのような手術を受けるのですか?
2.手術中どのようなことをするのですか?
3.皮膚切開はどこに、どのくらいするのですか?
4.私の手術に骨移植は必要ですか?
5.骨移植が必要ならどのようにするのですか?
6.手術の利点や欠点はどうなりますか?
7.インストルメンテーションやインプラントは使われますか?
8.手術後の痛みはどうですか?
9. 手術後、どのくらい入院が必要ですか?
10.術後のリハビリはどうなりますか?
11.同じような治療を受けた患者さんはいますか?
12.誰に相談や質問をしたらいいですか?

 「はくざん通信」を参照した上で、上記のような疑問が解消しない場合は、主治看護師、病棟看護師長、主治医、麻酔科医、リハビリ担当の理学療法士などに御相談下さい。

○頚椎症性脊髄症とは

 頚椎の変化によって脊髄が圧迫され、種々の神経症状を表すものです。
 症状:脊髄症の症状はゆっくりと表れますし、高齢化の年代にはいって体の色々な働きが低下する頃に症状が出てくるので、老化の症状と思われて見過ごされていることがあります。
 脊髄症になると、階段を昇り降りするとか衣服のボタンを留めるなどの「協調運動」がうまくできなくなります。頚部の痛みがずっと以前から続いていたり、協調運動がうまくできなくなったり、歩行困難、急に筋力が低下してきたり、以前はうまくできていたことが最近はできなくなったなどの症状があれば、専門医に相談して下さい。
 手術について:手術を受けるか否かを最終的に決めるのは、御本人です。御本人の体の状態、心の状態や意欲が術後の快復に大きな影響力を持っています。手術の効果や限界を理解し、前向きの態度で向かうことは重要です。

 医療は個々人に合わせたオーダーメードのものですから、ここに記載した情報のすべてが「あなたの治療や結果」にそのままあてはまるとは限りません。
 理解できない点は主治医ほかにお尋ね下さい。


手術の説明について

 情報公開の流れに沿って、手術の説明を試みました。米国ではインターネット上に、一般人向けの手術の説明が公開されています。「はくざん通信」では、このサイト(http://www.spinehealth.com/topics/surg/overview/s01.html)や(http://www.neckreference.com/)を参考にして本文の解説を行いました。手術の図は(http://www.spine-health.com/dir/dir01.html)や(http://www.neckreference.com/)から主に引用しました。
 日本語では、グロービュー社の「新図説臨床整形外科講座」や金原出版の「頚椎外科」酒匂 崇編集などを参考にしました。 
             (編集代表:医局 野上俊光ほか)


COPYRIGHT naruoseikei成尾整形外科病院  ホーム  はくざん通信の目次に戻る