はくざん 通信   第32号 2003.8.30   ホーム  はくざん通信の目次に戻る 


腰椎の手術1
●脊椎の手術について
●腰椎の手術(除圧と固定)
●除圧術は2種類
●ヘルニア摘出術(ラブ法)
●手術による改善率 ●危険性や合併症


脊椎の手術について

 脊椎手術(頚部や腰部)の主な目的は、手術をしない保存的治療では改善がみられない体の構造的 (解剖学的)な異常を改善することです。

 脊椎の手術の殆どは救急のものではなく、待機的(「時間を選んで待てる手術」の意味)なもので す。手術は患者さまの運動機能を増大し、疼痛を減少させるのが目的です。

 脊椎手術で救急の状態というのはまれですが「神経の機能消失が進行性に進んでいる時(運動麻 痺)や膀胱・直腸障害(感覚消失や麻痺、排尿障害)の時」には緊急手術を行います。

 脊椎の手術は専門の整形外科医が行っております。最近は現代医学の進歩によって問題発生や副 作用・合併症などは減少し、治療成績は向上しています。


一般論

       椎間板ヘルニア

腰椎の手術について

 腰椎の手術を大まかに把握するには、除圧術decompression と固定(癒合)術 fusionに分けて理解すると良いでしょう。

除圧術 decompression は、神経根や脊柱管を圧迫している骨や突起物を除去したり、椎間板ヘルニ ア部を取り除き、除圧・治癒を狙うものです。まれに腫瘍による圧迫を取り除く場合もあります。

固定(癒合)術 fusion は、移植骨片(手術操作の時に取り外した自家骨など)や人工骨などを利用し、疼痛を引き起こしている脊骨や関節部の動きを止めるために行います(固定用の金属類を使うこともあります)。動きが制限されると痛みは減少します。

 除圧術と固定術を併用することもあります。

除圧術は2種類の手術方法から選びます

 腰部の除圧術は病態によって以下の2つの方法から手術適応を選びます。

ヘルニア摘出術(Love(ラブ)法)

 病変の主因子が椎間板ヘルニアの場合に選択します。神経を圧迫しているヘルニア部を切除します。
 腰痛よりも下肢痛の改善にむいています。通常、神経圧迫がとれると下肢の疼痛は手術直後から劇的 に改善します。圧迫がとれても神経根の正常な快復には数週間から数ヶ月かかりますので、しびれや筋 力低下が改善するにはそれなりの時間がかかります。

椎弓切除術

 腰部脊柱管狭窄に伴って腰痛・下肢痛が起こっている場合に選択します。脊椎の変形、椎間関節の肥 厚、靱帯の肥厚などがある場合に適応となります。


手術方法について具体的に説明します。

ヘルニア摘出術

椎間板ヘルニアの部位椎間板ヘルニアの手術

●ヘルニア摘出術は椎間板ヘルニアのはみでた部分のみを切除します。椎間板をある程度温存する手術方法です。全身麻酔後、手術台で腹這いの姿勢になります。腰背部の中央部に4〜8cm程度の小さな皮切を入れ、ここから手術を進めます。
●背中の目印を確認し、正中に4 〜 8cm 程度の皮膚切開を加えます。
●皮膚から触(ふ)れる飛び出している骨(棘突起)や繋がっている骨(椎弓)に付着している筋肉(脊柱起立筋)を骨から外します(切断するのではありません)。●椎弓の間にある黄色靱帯を取り除くと、多くの場合、神経根の下方(腹側)で頭側方向にヘルニアが出てきます。必要に応じて、椎弓や椎間関節の内側を部分的に切除し、神経根への圧迫を解除したり、視野を確保したりします。

  椎間板ヘルニア1図1  椎間板ヘルニア2図2 椎間板ヘルニア3図3

この図1は、左側の椎弓(Lamina)を部分切除してヘルニアを見やすくし、同時に神経根への除圧を計ったところです。部分椎弓切除は必要ない事もあります。

●神経根をヘルニア部から丁寧に動かし(多くの場合は神経根を中心に寄せる)、神経根の下に出てきているヘルニア部を切除します。この図2は神経根を損傷しないように内側に保護しながらヘルニア部分のみを出している所。この飛び出したヘルニア部を切除し、神経根を除圧します。 この図では見やすいように上の脊椎骨をはずして描いています。

●椎間板の髄核部(はくざん通信30号を参照)を追加切除 し、椎間板内圧を下げる処置を追加することもあります。
完全に除圧できたか神経根のゆるみを確認し、手術を終了します(図3)。術後の出 血を体外にだすため、ドレーンを入れて皮膚を縫合します。


 この術式では、殆どすべての関節、靱帯、筋肉などは温存されますので、脊柱の構造に与える影響は最小限に抑えられ、快復は早いです。

 一般論ですが、椎間板ヘルニアによる疼痛が保存療法で改善 中なら6週から12週位は改善が続きます。

 麻痺があったり、下肢痛が6週間以上続き保存療法でも改善 が見られないなら、この手術のよい適応となります。12週以上 (3〜6ケ月)になると、手術をしても改善が遅れますので「手 術をせずにこれ以上長く様子を見るのは得策ではない」と言われています。

 外科医によっては、手術後6週間は腰を深く曲げたり重いも のを持ち上げたり、捻ったりしないように制限をしています。 日常生活にはすみやかに戻れます。

 平均的な安静期間は術後5〜7日、以後軟性コルセットを2 〜3週装着してリハを行い、術後3〜4週で退院となります。

手術による改善率 90%から95%です。 5%から10%の方は再び椎間板ヘルニアを起こすことがあると言われています。再発は 術直後すぐ起こることもありますし、数年以上たって起こることもあります。同じ場所に ヘルニアが起こることもありますし、違う場所にできることもあります。快復してからの 腰痛体操は再発予防に有用です。

危険性や合併症 硬膜損傷(脳脊髄液 が漏れてくる)、神経根への障害(痛みや一時的な麻痺)、膀胱直腸障害、術後出血(硬 膜外血腫)、感染、静脈血栓症などです。いずれも頻度は少なくまれで、術後の経過に影 響を与えることは極まれです。


手術の説明を手がけるにあたって

 日本では、手術の説明を図入りの文書で行っている所は、まだ少数です。

 情報公開の流れに沿って、今回から手術の説明を試みました。米国ではインターネット上に 一般人向けの手術の説明が公開されています。「はくざん通信」では、このサイト(http://www.spine-health.com/topics/surg/overview/s01.html)を参考にして本文の解説を行いまし た。  
 手術の図は(http://www.spine-health.com/dir/dir01.html)から主に引用しました。

 腰椎の手術の理解にはこの32号及び33号、34号を参照して下さい。病気の状態は個々の患者 さま毎に差異がありますが、8割前後の患者さまには、この解説が対応し、理解が進むものと存じ ます。この試みを応援して下さい。

(編集代表:医局 野上俊光ほか)


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